成年後見制度
もの忘れ

成年後見制度とは?

 成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分となった方のために、法律面や生活面で支援する制度です。
 成年後見人は、法定代理人として「法律行為」「財産管理」「身上監護」本人の代行をいたします。
 具体的には、お金の管理(銀行での手続きや支払)、施設との契約、不動産の契約、年金の手続きなどを行います。
 成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。

法定後見制度

認知症などで本人の判断能力の低下後に、裁判所に申し立てることで後見開始。
 

任意後見制度

認知症などで本人の判断能力が低下する前に後見契約を行い、判断能力低下後に後見開始。

法定後見制度

 
下記のように、判断能力がすでに低下してしまっている場合に利用する制度。

●認知症で預貯金の引出、振込が出来ない、通帳を紛失 
●父や母が悪徳商法に騙されて、不要な品を買ってしまう 
●他の親族が父母のお金を使いこんでいる可能性がある 
●寝たきりの親の面倒をみているが、兄弟から親の財産を使い込んでいないかと疑われている
●障がいのある子どもの将来が不安だ 
●不動産の売却や遺産分割協議の必要があるが、本人では判断不可能で、手続きできない 
●叔母が一人暮らしで子供はいなく、甥姪が面倒をみるには負担大

●法定後見制度のメリット

 
①本人や家族の意思(配偶者・4親等内の親族又は3親等内の姻族)、市区町村長の申立てにより、一部の家族・親族の反対があっても申立てが可能。中立な立場の人間を成年後見人、保佐人、補助人に選任できる。
②判断能力が減退した方の財産管理、身上監護、各種契約代行(医療契約、施設契約等)を全般的に行える。 
③不利益になる契約を締結してしまうリスクがなくなる。
●法定後見制度のデメリット

 
①誰が成年後見人等か不明なので「誰を成年後見人等に選任するか」という家庭裁判所の判断に、不服申し立てができない。 
②申し立てをすると、家庭裁判所の許可がないと取り下げをができない。そのため、希望者が成年後見人等に選任されそうにないという理由では取り下げは認められない。 
③申し立てから後見人就任(審判確定)まで2か月前後手続き期間が必要、迅速性に欠ける。
④成年後見人は、本人の財産を投機的な運用や、自らのために本人の財産(預貯金、不動産)を使用すること、親族などに贈与・貸付をする、本人名義の不動産に担保権(抵当権)の設定となどは、原則として認められない(資産凍結)。 
⑤成年後見人の仕事は、申し立てのきっかけとなった目的(売買や遺産分割など)が終わっても、本人が判断能力を回復したり、亡くなるまで続く。 
⑥成年後見人の報酬は、裁判所が決定する。
任意後見制度

 
元気な人が将来の判断能力低下時に備える制度。 下記のような場合に、契約で自分が信頼できる(任意の)人に後見人を頼むことができる。

●今は元気だが、将来認知症になったときに不安がある 
●夫婦二人暮らしだが、将来に備えて自宅の処分や老人ホーム探しを検討していきたい 
●後見人となる人を予め決定、任意後見監督人、家庭裁判所の財産管理を行ってほしい 
●老人ホームや病院での手続き、支払い等、頼める親族が身近になく、信頼できる専門家に依頼したい 

●任意後見制度のメリット

 
①任意後見人受任者(任意後見契約で定めた人)が就任できる。 
②任意後見契約の中で、どこまでの後見業務(代理権)を委任するかは自由に決めることができる。ただし、一身専属的な権利(結婚・離婚・養子縁組など)は締結することはできない。 
③任意後見人の報酬を自由に設定することができる。
④居住用不動産でも家庭裁判所の売却許可が不要。
●任意後見制度のデメリット

 
①あくまで代理権なので、本人が行なった契約などの取消はできない。 
②状況によっては(本人の利益のため特に必要がある場合)、任意後見監督人選任の申し立てをしても却下され、家庭裁判所が職権で成年後見人を立ててしまう可能性もある。 
③任意後見監督人が就任し、任意後見人の後見業務は任意後見監督人に定期的にチェックされる(資産凍結)。 
④任意後見監督人の報酬は、裁判所が決定する。

成年後見制度と家族信託には、以下のような違いがあります。

  成年後見 家族信託
 制度の目的 本人の保護・支援 柔軟な資産承継及び財産の管理/運用/処分
 費用 初期費用:10~30万円
月額費用:1万~3万円
裁判所、もしくは契約で定められる
初期費用:50~100万円
月額費用:なし
契約で定められる
 制度の目的 本人の判断能力がなくなった後 契約締結時からスタート可
お金の使い方 本人のためのみ使え、家族のためには使えない
また、財産を増やすための投資等はできない
契約の範囲で自由に決めることができる
節税対策 相続税の節税のために行う行為は難しい 節税のため財産管理、
不動産売却など家族間の契約条項で可能
株式議決権行使
他人の関与 法定後見・・・裁判所が決める
任意後見・・・契約であらかじめ決める
不要
(司法書士などを関与させることも可能)
裁判所の監督 あり あり